[短編小説] 理想の生活にあこがれる小金持ちの夫婦を待ち受けていた失望と緩やかな困窮の日々……(「もの」)

 文学に属するようなタイプの短編小説。

 『D.H.ロレンス幻視譚集』という短編集に収録されている作品ですが、この作品自体には幻想的な要素はありません。

 

 この小説の主人公は、素敵な生活にあこがれる20代半ばの夫婦です(※スタート時点)。

 大金持ちとはいえないまでもそれなりの年収があり、自由に生活ができる彼らは、理想の生活を求めておしゃれな街に引っ越したり、自分たちを魅了した家具などを購入したりするのですが――

 10年、15年と時間が過ぎていくにつれて、彼らはいくつもの失望を味わったり、以前は素敵に見えていたものがその輝きを既に失っていることに気づいたりしていきます。そして彼らの生活自体も徐々に困窮へと向かってゆくのです……

 特にドラマチックなことが起こる小説ではないのですが、人生をある側面から見せてくれるような感じがあって、印象的な作品でした。


D.H.ロレンス幻視譚集 (平凡社ライブラリー) [ デーヴィド・ハーバート・ローレンス ]
 

 

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